体のだるさ(倦怠感)のセルフモニタリング

 

ここでは、心不全が悪化していくときに生じやすい症状で、自ら気づきやすい症状の一つである身体のだるさの変化について解説するとともに、自らが身体のだるさの変化を自覚して、セルフモニタリングする方法についてお伝えします。

体のだるさ(倦怠感)の自覚をセルフモニタリングしていますか?

もし、今、心不全のあなたに体のだるさ(倦怠感)が出現したら、どのように思われますか?

「睡眠不足かな?」「疲れが出たかな?」と、普通なら思うところですが、心不全をお持ちの方は、心臓がより弱ってきているせいかもしれないのです。

心臓の悪い方は、この体のだるさ(倦怠感)の出現を意識することがとても重要です。

心機能と倦怠感との密接な関係を理解することこそ、セルフモニタリングができるようになる第一歩ですので、ぜひ理解を深めてください。

心臓は全身の細胞や臓器に酸素や栄養を含んだ血液を送り届けていますが、心臓が弱って全身に十分な血液を送り出せない状態になると、体の隅々に酸素や栄養が行き渡らなくなります。

そうなると、各器官や臓器は十分な活動ができなくなり、特に、筋肉を動かす運動などは、酸素消費量が多くなるので、きつい動作となり、動くのがつらい、という自覚につながります。
つまり、動くことがしんどい、けだるい、倦怠感がある、といった状態に陥るのです。

体のだるさ(倦怠感)は、各器官や臓器が十分な活動ができなくなっているシグナルで、体を休めて、血液供給量を必要最小限で間に合うようにしようとする防衛ともいえるでしょう。この防衛反応が倦怠感の原因だとしたら、あなたはどう感じますか?

倦怠感をあなどってはいけない、だるさが出たときは、心臓に要注意だ、と感じることが重要ですね。

さて、今、あなたは、『倦怠感は、心臓が苦しんでいるサイン』と理解することができましたでしょうか?

したがって、あなたは、日ごろ、だるさや倦怠感が出ていないか、を意識することが大切なのです。

心不全を患う方の多くは、すでにだるさや倦怠感の自覚をお持ちです。すでに、心機能が低下気味のため、日常、いつもだるいという状態にある場合もあるでしょう。その時は、日ごろのだるさや倦怠感が増強していないか、数日前できたことができなくなっていないか、というところで変化をとらえていくことが必要になるでしょう。

合わせて、「体のだるさ(倦怠感)の自覚で、モニタリングすべきポイント」も理解してくださいね。

 

体のだるさ(倦怠感)でセルフモニタリングすべきポイント

『体のだるさ(倦怠感)は、心臓が苦しんでいるサイン』であることは理解できましたか?

まだ理解できていない人は、「体のだるさ(倦怠感)の自覚をセルフモニタリングしていますか?」を参照してくださいね。

あなたの体は、心臓が送り出す血液に含まれる酸素と栄養素を取り入れ、イキイキと活動できています。しかし、心臓が弱っていて、血液が心臓で滞り気味だったら、体はどうなってしまうと思いますか?

ーそうです、酸素と栄養素がなければエネルギーを産生できないため、活動ができません。

酸素と栄養素の供給が少なくなってしまった状態になったとき、体はどうやってこのピンチを乗り切ろうとするでしょうか?

-そうです、生命維持に必要な脳や各臓器にできるだけ十分な血液を回し、運動といった身体活動は余分なこととして、後回しにします。だから、心臓が弱っているのに、体を使ったり動いたりすると、体がついてこないしんどさを感じるのです。
それなのに、体を使わないわけにいかない仕事や家事があれば、人はそれをこなそうとしますが、体のだるさ(倦怠感)を感じながらやることになる。そして、さらにしんどくなり、ものごとが億劫になりながら、しなくてはいけないから頑張り、さらに心臓に負担をかけてしまう。これが体のだるさの悪循環です。

だから、体のだるさ(倦怠感)の自覚をセルフモニタリングして、倦怠感の悪循環に陥らないように気を付けることが重要なのです。

あなたの生活で、体のだるさ(倦怠感)が生じやすいタイミングで、だるさやしんどさ、倦怠感の出現やその変化を意識してみましょう。

これまで、私が出会った患者様は、

・朝起きたとき:起き上がるのがしんどい、もっと寝ていたい、と思う

・通勤、通院など移動したとき:いつもの道がきつく感じる、体がついてこない、と思う

・家事をしたとき:いつもの仕事がこなせず、止まってしまう

・入浴したとき:ゆっくり湯船につかれない、風呂にはいることがつかれる

・人との接触:人に誘われても出かけるのがしんどいと思う、できるだけじっと家にいたいと思う
などなど、生活の随所で体のだるさ(倦怠感)を自覚する経験をされているようです。

多くの人は、心臓が悪いから体がだるいということを感じているようですが、その程度によって、病状の悪化を察知することも可能です。

つまり、体のだるさ(倦怠感)の自覚でセルフモニタリングすべきポイントは、自己の生活における体のだるさ(倦怠感)がどのようなタイミングで生じるのか、また、その状態は変化していないか、をできる限り把握すること、です。

合わせて、「体のだるさ(倦怠感)の変化を自覚したらどうしたらいいのか?」も理解してくださいね。

 

体のだるさ(倦怠感)の変化を自覚したらどうしたらいいのか?

あなたは、自分の生活において、体のだるさ(倦怠感)の出現に留意する必要性が、わかってきましたか?

まだ理解できていない人は、「体のだるさ(倦怠感)の自覚をセルフモニタリングしていますか?」を参照してくださいね。

さて、体のだるさが生じたり、その程度の変化が感じられたらどうすればよいのでしょう??

先ずは、体のだるさ(倦怠感)がどのように変化しているのか、じっと感じてみましょう。

①倦怠感がでているが、前にも感じたことのある程度だ

②倦怠感がでて、体を動かすのをやめているが、だるさがとれない、ひどくなっている

③倦怠感がでて、ひどくなっている。前に出来たことができない

④倦怠感がいつも以上に強く、休んでも改善した感じがしない

どのような状態かをしっかりとらえましょう。

あなたの体のだるさ(倦怠感)は、上記のどれかに当てはまることになると思いますが、その状態をどのように解釈しますか?

症状や状態に対する解釈が適切になされることで、病状悪化が食い止められるのです。

①の状態の場合は、要注意ですが、安静にすることで収まるようであれば、少し様子を見ることは可能な状態と言えるでしょう。前にも感じたことがあるなら、前におこなった対処行動をとってみるのも良い方法です。

しかし、②、③、④は、安静にしてしんどさが落ち着いたとしても、倦怠感が悪化傾向にある可能性が否定できません。倦怠感の増強は、心臓が十分に働けていないために起きているのですから、心不全の状態悪化が生じ始めている恐れがあります。そのほかに、息切れやドキドキ感、むくみなど、随伴症状がないかどうかも意識してみることも必要です。このような時は、病院に行くことも考え、これまでの医師の指示を思い出して、積極的に対処しましょう。

体のだるさがでたときは、「このくらいなら大丈夫だろう」とか、「心臓が悪いんだから仕方がない」とか、ついつい軽いほうに考えてしまいがちになります。

でも、その小さな見逃しが、あなたの心臓の負担となり、体のだるさ(倦怠感)を悪化させているかもしれません。

心臓を守るのは、あなた自身のセルフモニタリングで可能です。自分の傾向を医師と相談し、留意点を確認していくことも積極的に取り入れていくとよいでしょう。

体のだるさ(倦怠感)の自覚をあなたの生活に取り入れて、その症状変化に適切な判断を下していきましょう。

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