動悸のセルフモニタリング

 

ここでは、心不全が悪化していくときに生じやすい症状で、自ら気づきやすい症状の一つである動悸(脈拍の変化)について解説するとともに、自らが脈拍の変化を自覚して、セルフモニタリングする方法についてお伝えします。

動悸の自覚をセルフモニタリングしていますか?

もし、今、心不全のあなたに動悸が出現したら、どのように思われますか?

「心臓が変だな?」と、思うでしょうか。心不全をお持ちの方は、ドキドキと動悸を感じたとき、心臓に負担がかかっているかもしれないのです。

心臓の悪い方は、この動悸の出現を意識することがとても重要です。

心機能と動悸との密接な関係を理解することこそ、セルフモニタリングができるようになる第一歩ですので、ぜひ理解を深めてください。

心臓は全身の細胞や臓器に酸素や栄養を含んだ血液を送り届けていますが、心臓が弱って全身に十分な血液を送り出せない状態になると、体の隅々に酸素や栄養が行き渡らなくなります。

そうなると、各器官や臓器は十分な活動ができなくなり、苦しい状態になってしまうため、心臓は少しでも血液を送り出そうと脈打つ回数を増やして補おうとすることがあります。脈が多くなるということは、血液循環量が増加し、酸素と栄養素の供給を保とうとする代償機能が働くということでもあるのです。この際、ご本人が感じるのは、脈がドキドキ、早く打っている、動悸がするという感覚です。

つまり、動悸は、心臓から送り出される血液量が減っており、それでも心臓が何とか頑張って各器官や臓器に血液を循環させようと苦慮しているシグナルだとしたら、あなたはどう感じますか?

この動悸は、心臓の悪い人だけに起こる現象ではありません。健康な人も、急いで走った後、ドキドキ脈が速くなりますよね?通常の歩行では足りていた酸素と栄養素の供給が、走ることによって足りなくなり、脈打つ数を増やして、補給量を増やしているのです。つまり、心臓にもともと備わっているピンチを乗り切る切り札なのです。ですから、動悸が生じた、イコール心不全の悪化ではありませんが、悪化しているときもある、ということを理解し、自分の動悸の出現に留意することが重要と言えるでしょう。

さて、今、あなたは、『動悸は、心臓が苦しんでいるサインかもしれない』と理解することができましたでしょうか?

したがって、あなたは、日ごろ、動悸が出ていないか、を意識することが大切なのです。

合わせて、「動悸の自覚で、モニタリングすべきポイント」も理解してくださいね。

 

動悸の自覚でセルフモニタリングすべきポイント

まだ理解できていない人は、「動悸の自覚をセルフモニタリングしていますか?」を参照してくださいね。

あなたの体は、心臓が送り出す血液に含まれる酸素と栄養素を取り入れ、イキイキと活動できています。しかし、心臓が弱っていて、血液が心臓で滞り気味だったら、体はどうなってしまうと思いますか?

ーそうです、酸素と栄養素がなければエネルギーを産生できないため、活動ができません。

酸素と栄養素の供給が少なくなってしまった状態になったとき、体はどうやってこのピンチを乗り切ろうとするでしょうか?

-そうです、心拍の回数を増やして、少しでも多くの血液を全身に届けようとします。これが、動悸として自覚されることがあります。そのほかにも、生命維持に必要な脳や各臓器にできるだけ十分な血液を回し、運動といった身体活動は余分なこととして、後回したりすることもします。これは、からだのだるさ(倦怠感)の原因になることもあります。

だから、動悸という自覚症状をセルフモニタリングして、心臓に負荷がかかっていないか、気を付けることが重要なのです。

あなたの生活で、動悸が生じやすいタイミングはありませんか。動悸出現やその変化を意識してみましょう。

これまで、私が出会った患者様は、

・朝起きたとき:一気に立ち上がるとドキドキする

・通勤、通院など移動したとき:ちょっと急ぎ足になったり、信号で慌てて走ったら動悸がする

・家事をしたとき:洗濯物を干したり、高いところの作業をするとドキドキする

・入浴したとき:少しゆっくり入浴しただけで、ドキドキしてしまう
などなど、生活の随所で動悸を自覚する経験をされているようです。

多くの人は、心臓が悪いから動悸が起こりやすいことを理解されているようですが、動悸が心臓の頑張りを示すものとして、病状の変化の指標にすることは大切です。

つまり、動悸の自覚でセルフモニタリングすべきポイントは、自己の生活における動悸がどのようなタイミングで生じやすいのか、また、動悸の出現の仕方は変化していないか、をできる限り把握すること、です。

合わせて、「動悸の変化を自覚したらどうしたらいいのか?」も理解してくださいね。

 

動悸の変化を自覚したらどうしたらいいのか?

あなたは、自分の生活において、動悸の出現に留意する必要性が、わかってきましたか?

まだ理解できていない人は、「動悸の自覚をセルフモニタリングしていますか?」を参照してくださいね。

さて、動悸が生じたり、その程度の変化が感じられたらどうすればよいのでしょう??

先ずは、動悸がどのように変化しているのか、じっと感じてみましょう。

①動悸がでているが、前にも感じたことのある程度だ

②動悸がでて、体を動かすのをやめているが、動悸がおさまらない、ひどくなっている

③動悸がでて、ひどくなっている。前に出来たことが出来ない

④動悸がいつも以上に強く、休んでも改善した感じがしない

どのような状態かをしっかりとらえましょう。

あなたの動悸は、上記のどれかに当てはまることになると思いますが、その状態をどのように解釈しますか?

症状や状態に対する解釈が適切になされることで、病状悪化が食い止められるのです。

①の状態の場合は、要注意ですが、安静にすることで収まるようであれば、少し様子を見ることは可能な状態と言えるでしょう。前にも感じたことがあるなら、前におこなった対処行動をとってみるのも良い方法です。

しかし、②、③、④は、安静にして動悸が落ち着いたとしても、動悸が悪化傾向にある可能性が否定できません。動悸の増強は、心臓が十分に働けていないために起きているのですから、心不全の状態悪化が生じ始めている恐れがあります。そのほかに、息切れや倦怠感、むくみなど、随伴症状がないかどうかも意識してみることも必要です。このような時は、病院に行くことも考え、これまでの医師の指示を思い出して、積極的に対処しましょう。

体のだるさがでたときは、「このくらいなら大丈夫だろう」とか、「心臓が悪いんだから仕方がない」とか、ついつい軽いほうに考えてしまいがちになります。

でも、その小さな見逃しが、あなたの心臓の負担となり、動悸を悪化させているかもしれません。

心臓を守るのは、あなた自身のセルフモニタリングで可能です。自分の傾向を医師と相談し、留意点を確認していくことも積極的に取り入れていくとよいでしょう。

動悸の自覚をあなたの生活に取り入れて、その症状変化に適切な判断を下していきましょう。

 

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