咳のセルフモニタリング

 

ここでは、心不全が悪化していくときに生じやすい症状で、自ら気づきやすい症状の一つである咳について解説するとともに、自らが咳を自覚して、セルフモニタリングする方法についてお伝えします。

咳の自覚をセルフモニタリングしていますか?

もし、今、心不全のあなたに咳や痰が出現したら、何を考えますか?

「風邪を引いてしまったかな?」と思ったあなたは、要注意です。その咳や痰は、心臓が弱っているせいかもしれないのです。

心臓の悪い方は、この咳や痰の出現を意識することがとても重要です。

「心臓と咳や痰は関係ないんじゃないかい?」という声が聞こえてきそうですが、その密接な関係を理解することこそ、セルフモニタリングができるようになる第一歩ですので、ぜひ理解を深めてください。

心臓は全身の細胞や臓器に酸素や栄養を含んだ血液を送り届けていますが、送り出す血液は、肺から受け継いでいます。しかし、心臓の機能が弱くなり、十分に血液を送り出せなくなると、心臓へ流れてこようとする血液が肺にたまってしまう状態になります。肺はたまってしまった水分を心臓に送りたいのに、心臓の調子が悪くて送り出せない状態が続くと、肺をめぐっている血管内の血液量が増加し、肺うっ血という状態になってしまいます。

肺うっ血になってしまった肺は、何とか水分を外に出そうと、呼吸器の気道を通して水気を外に排出します。これが、痰であり、咳の原因だとしたら、あなたはどう感じますか?

咳は、気道の異物を外に出そうとする働きです。気道に水分が増えていると咳が出ます。痰は気道の水分が粘液や雑菌などと混ざり大きくなった状態ですので、痰が多くなってきているときは、咳もひどくなっている状態と考えられ、心機能もだいぶ落ちている可能性が否定できません。

さて、今、あなたは、『咳は、心臓が苦しんでいるサイン』と理解することができましたでしょうか?

したがって、あなたは、日ごろ、咳が出ていないか、もともと痰や咳が出る人は、ひどくなっていないか、を意識することが大切なのです。

合わせて、咳の自覚で、モニタリングすべきポイントも理解してくださいね。

 

咳の自覚でセルフモニタリングすべきポイント

『咳は、心臓が苦しんでいるサイン』であることは理解できましたか?

まだ理解できていない人は、「咳の自覚をセルフモニタリングしていますか?」を参照してくださいね。

あなたの肺は、酸素で満たした血液を心臓へ流し、全身の細胞がイキイキ活動できるようにしてくれています。しかし、心臓が弱っていて、血液が心臓で滞り気味だったら、肺はどうなってしまうと思いますか?

ーそうです、肺は、心臓に行けなかった血液で充満され、水分が過剰な状態、肺うっ血になってしまいます。

血液を心臓に送り出せず、水分量が多くなってしまったら、肺はどうやってこのピンチを乗り切ろうとするでしょうか?

-そうです、もっと水分を肺の外に出さなくちゃ、水分を気道から外に出そうと、咳を、痰を出すようになる。心臓の状態がよくならないと、痰の量がどんどん増え、水っぽい痰が増えていき、せき込むことも増えていく。これが咳の悪循環です。

だから、咳の自覚をセルフモニタリングして、咳の悪循環に陥らないように気を付けることが重要なのです。

あなたの生活で、咳が生じやすいタイミングで、自分の咳や痰の出現やその変化を意識してみましょう。

これまで、私が出会った患者様は、

・朝起きたとき:なんだか咳が出て、風邪を引いたかな、と思う

・疲れがたまった感じがするとき:体がだるく、咳と痰が出て、風邪気味かと思う

・家事をしたとき:いつもの仕事がこなせず、咳き込んでしまう
などなど、生活の随所で咳を自覚する経験をされているようです。

多くの人は、やはり、「風邪」と結びつけてしまうようです。あなたには、咳や痰がでる自覚の経験はありませんか?

つまり、咳の自覚でセルフモニタリングすべきポイントは、自己の生活における咳がどのようなタイミングで生じるのか、また、咳とともに排出される痰がある場合、痰の量、性状は変化していないか、をできる限り把握すること、です。

合わせて、「咳の悪化、痰の変化を自覚したらどうしたらいいのか?」も理解してくださいね。

 

咳の悪化、痰の変化を自覚したらどうしたらいいのか?

あなたは、自分の生活において、咳や痰の出現に留意する必要性が、わかってきましたか?

まだ理解できていない人は、「咳の自覚をセルフモニタリングしていますか?」を参照してくださいね。

さて、咳が生じたり、痰の性状の変化が感じられたらどうすればよいのでしょう??

先ずは、咳および痰がどのように変化しているのか、じっと感じてみましょう。

①咳がでているが、痰は特にない

②咳が出て、ひどくなっている。痰は特にない

③咳が出て、ひどくなっている。痰も出ている

どのような状態かをしっかりとらえましょう。

あなたの咳は、上記のどれかに当てはまることになると思いますが、その状態をどのように解釈しますか?

症状や状態に対する解釈が適切になされることで、病状悪化が食い止められるのです。

①の状態の場合は、要注意ですが、安静にすることで咳が収まるようであれば、少し様子を見ることは可能な状態と言えるでしょう。

しかし、②、③は、安静にして呼吸が整ったとしても、咳がひどくなっている以上、肺の水分量が増えてしまっている可能性が否定できません。よって、心不全の状態悪化が生じ始めている恐れがあります。不整脈が出たり、息切れが収まりそうにないなどの副症状も現れているかもしれません。このような時は、病院に行くことも考え、これまでの医師の指示を思い出して、積極的に対処しましょう。

咳がでたときは、「このくらいなら大丈夫だろう」とか、「風邪だから、静かに寝たら治るだろう」とか、ついつい軽いほうに考えてしまいがちになります。

ひどい状態になると、肺水腫という肺の中が水びたしの状態になり、ピンク色の泡立った痰(泡沫痰)が出たり、喘息のようにゼエゼエと喘鳴がします。この時には、横になって寝ることが肺を圧迫するためつらくなり、座ったまま寝たいという感覚になる方もおられます。

あなたのその咳の小さな見逃しが、あなたの心臓の負担となり、心不全を悪化させているかもしれません。

心臓を守るのは、あなた自身のセルフモニタリングで可能です。自分の傾向を医師と相談し、留意点を確認していくことも積極的に取り入れていくとよいでしょう。

咳の自覚をあなたの生活に取り入れて、その症状変化に適切な判断を下していきましょう。

 

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