尿量のセルフモニタリング

 

ここでは、心不全が悪化していくときに生じやすい症状で、自ら気づきやすい症状の一つである尿量の変化について解説するとともに、自らが尿量の変化を自覚して、セルフモニタリングする方法についてお伝えします。

 

尿量をセルフモニタリングしていますか?

あなたは、普段、自分の尿量、すなわち、おしっこの量や出方をきにかけていますか?

「おしっこがいつもより少ないなぁ」「トイレが近いなあ」などと、感じることはしばしばあることですが、それが心臓の調子を反映していることはご存知でしょうか。

心臓の悪い方は、この尿量の変化、排尿時の変化を意識することがとても重要です。

心機能と尿量との密接な関係を理解することこそ、セルフモニタリングが的確にできるようになる大切なポイントですので、ぜひ理解を深めてください。

心臓は全身の細胞や臓器に酸素や栄養を含んだ血液を送り届けていますが、同時に体内の老廃物も静脈系を動かして集め、排せつへとつなげています。具体的には、細胞や各器官から老廃物を受け取り、腎臓へと運びそこで分解し排せつしやすい状態へと変化させて、不要物を尿として排出していきます。

尿には、さまざまな代謝産物が溶け込んでいます。それには、腎臓のろ過機能が関わっていますが、それが順調に働くためにはある程度の血圧が必要となります。

血圧が心不全により低くなると、腎臓まで十分な血液が届かなくなったり、腎機能が落ちてしまったりするため、尿が作られにくくなり、その結果尿量が少なくなっていくのです。

そうなると、各器官や臓器に老廃物が蓄積したり、水分が細胞間に貯留するなど、むくみや他の臓器の弊害という負の連鎖が生じてしまいます。

つまり、尿量が少ない、おしっこがいつもより出にくい、といった自覚は、心機能の低下という現象が生じていることを暗示している可能性がある、という事なのです。

さて、今、あなたは、『尿量の変化は、心機能が低下しているサイン』と理解することができましたでしょうか?

したがって、あなたは、日ごろ、尿量がいつも通り出ているか、少なくなっていないか、を意識することが大切なのです。

合わせて、「尿量の変化で、モニタリングすべきポイント」も理解してくださいね。

 

尿量でセルフモニタリングすべきポイント

『尿量の変化は、心機能が低下しているサイン』であることは理解できましたか?

まだ理解できていない人は、「尿量の自覚をセルフモニタリングしていますか?」を参照してくださいね。

あなたの体は、尿量がしっかりとあり、不要物が排せつされることで、イキイキと活動できています。しかし、心臓が弱っていて、尿量が少なくなっていたら、体はどうなってしまうと思いますか?

ーそうです、身体から老廃物、不要物を排せつすることができず、身体に蓄積してしまいます。

体に溜まっていく老廃物は、身体のとこにとどまっているのでしょうか?

-そうです、尿という水分が出ていかないと、むくみとして手足や顔などに溜まっていきます。ひどくなると、肺に水分が貯まって(肺水腫)呼吸を困難にしてしまう事もあります。
それなのに、体を使わないわけにいかない仕事や家事があれば、人はそれをこなそうとしますが、無理をして体を動かすと、ますます心機能に余裕がなくなり、腎臓へ血流を回すことが出来なくなり、尿量がさらに減ったり、むくみがひどくなったりしていきます。

だから、尿量の変化の自覚をセルフモニタリングして、身体に負担をかけないよう気を付けることが重要なのです。

あなたの生活で、尿量の変化が生じやすいタイミングで、尿の量や出方の変化を意識してみましょう。

これまで、私が出会った患者様は、

・朝起きたとき:食事量・水分量はいつもと変わっていないのにおしっこが少ない、と思う

・通勤、通院など移動したとき:トイレに行きたくて来たのに、思ったほど尿が出ない、と思う

・家事をしたとき:いつもの仕事がこなせず、身体がだるくて、むくんだかんじがする

・その他:処方されている薬(利尿剤)を飲んだ後、おしっこがたくさん出るが、それ以外は少ない気がする
などなど、生活の随所で尿量の変化を自覚する経験をされているようです。

多くの人は、尿量が減ると、「年だからなあ」とか、「前立腺が悪いのかな」と、加齢や泌尿器系の心配をすることが多いようですが、心不全、心臓病をお持ちの方は、心臓に由来して尿量が変化することもある、ということを知っておくことが大切です。その変化の様相によっては、病状の悪化を察知することも可能です。

つまり、尿量の変化でセルフモニタリングすべきポイントは、自己の生活における尿量の減少が起きていないか、いつも通りに尿がでているか、をできる限り把握すること、です。

合わせて、「尿量の変化を自覚したらどうしたらいいのか?」も理解してくださいね。

 

尿量の変化を自覚したらどうしたらいいのか?

あなたは、自分の生活において、尿量の変化の出現に留意する必要性が、わかってきましたか?

まだ理解できていない人は、「尿量の変化の自覚をセルフモニタリングしていますか?」を参照してくださいね。

さて、尿量の変化や尿の出方の違いが感じられたらどうすればよいのでしょう??

先ずは、排尿がどのように変化しているのか、よく意識してみましょう。

①尿量が少ない、または、尿の出方がいつもと違うようだが、尿は出ており、むくみはない(いつも通り動ける)

②尿量が少ない、または、尿の出方がいつもと違っており、倦怠感(だるさ)やむくみもいつもより多いようだ

③尿量が少ない、または、尿の出方がいつもと違っており、いつも出来ていることができない(しんどくてあまり動きたくない)

どのような状態かをしっかりとらえましょう。

あなたの尿量の変化は、上記のどれかに当てはまることになると思いますが、その状態をどのように解釈しますか?

症状や状態に対する解釈が適切になされることで、病状悪化が食い止められるのです。

①の状態の場合は、要注意ですが、安静にすることで収まるようであれば、少し様子を見ることは可能な状態と言えるでしょう。前にも感じたことがあるなら、前におこなった対処行動をとってみるのも良い方法です。

しかし、②、③は、安静にして尿量が落ち着いたとしても、心臓の調子が悪化傾向にある可能性が否定できません。だるさやむくみの増強は、心臓が十分に働けていないために起きているのですから、心不全の状態悪化が生じ始めている恐れがあります。そのほかに、息切れやドキドキ感、むくみなど、随伴症状がないかどうかも意識してみることも必要です。このような時は、病院に行くことも考え、これまでの医師の指示を思い出して、積極的に対処しましょう。

尿量の変化を意識している心臓病の患者様は、意外と少ないのです。「年のせいだから」とか、「出ていれば問題ない」とか、ついつい軽いほうに考えてしまいがちになります。

でも、その小さな見逃しが、あなたの心臓の負担となり、心臓への負担を悪化させているかもしれません。

心臓を守るのは、あなた自身のセルフモニタリングで可能です。自分の傾向を医師と相談し、留意点を確認していくことも積極的に取り入れていくとよいでしょう。

尿量の変化の自覚をあなたの生活に取り入れて、その症状変化に適切な判断を下していきましょう。

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