水分摂取量のセルフモニタリング

 

ここでは、心不全を悪化させてしまいやすい生活行動で、自ら気づきやすい行動の一つである水分摂取について解説するとともに、自らの水分摂取を自覚して、セルフモニタリングする方法についてお伝えします。

水分の摂取量をセルフモニタリングしていますか?

あなたは、普段、自分の水分摂取量、すなわち、食事以外に一日に飲む水分量を気にかけていますか?

心臓の力が弱くなっている心不全患状態の時に、水分を多く取りすぎると、心臓にさらなる負担をかけて、心臓の調子を悪くしてしまうことがあります。自分の心がけひとつで、心臓に余計な負担を掛けないで済むのですから、ぜひとも水分の摂取量を意識してみましょう。

飲んだ水分の多くは尿や汗となり、体外に排せつされていきます。しかし、心臓の機能が弱くなっていると、各細胞で不要となった水分を循環させたり尿へと変えていく力が弱くなるため、身体に水分が残りがちになります。つまり、心不全症状の悪化傾向にある時は、飲んだ水分がおしっこにならず、浮腫みとして体内に蓄積するという現象が起こりやすいのです。この仕組みを理解し、自分の水分の摂取量をセルフモニタリングできるようになると、大変有益ですので、ぜひ理解を深めてください。

心臓は全身の細胞や臓器に酸素や栄養を含んだ血液を送り届けていますが、この血液は飲んだ水分量を反映します。飲み物を多く摂取すれば、血液量も増えるので、心臓はその水分を循環させるために血圧を高めたり、心拍数を増やしたりして、多くなった水分も循環させようと頑張ります。つまり、水分摂取量が増えると、心臓の仕事量が増えることにつながる、という訳です。予備力がなくても心臓は頑張り、増えた水分を体内循環させ、腎臓へと運び、尿として排せつさせようと努めています。

尿として水分を体外に排せつするためには、腎臓のろ過機能が関わっていますが、それが順調に働くためにはある程度の血圧が必要となりますので、作る尿量が多くなると、その腎機能の維持のために、血圧をある程度の高さで保つ時間も長くなり、心臓の仕事量が減らない事態になることもあり得ます。そういう状態が続くと、心不全で弱りがちな心臓には大きな負担をかけていくことにつながってしまうのです。

増えた仕事に対応できなくなった心臓は、血圧を出すことが出来なくなり、過剰な水分が体内に蓄積することになります。これが、身体のむくみとして自覚されます。そして、むくみにより身体がだるくなったり、息切れが生じたり、さまざまな心不全症状の出現を招くことにつながっていくことが予測されます。

そうなると、水分を多く飲むことは、決していいことではないですよね。水分摂取を適正に管理することが、心臓の負担を招くことを防ぐ大切なセルフモニタリングなのです。

さて、今、あなたは、『水分の取り過ぎは、心不全を悪化させる可能性がある』と理解することができましたでしょうか?

したがって、あなたは、日ごろ、自分がどのくらいの水分を摂取しているのか、を意識することが大切なのです。

合わせて、「水分の摂取で、モニタリングすべきポイント」も理解してくださいね。

 

水分の摂取でセルフモニタリングすべきポイント

『水分の取り過ぎは、心不全を悪化させる可能性がある』ということは理解できましたか?

まだ理解できていない人は、「水分の摂取量をセルフモニタリングしていますか?」を参照してくださいね。

あなたの体は、たくさんのお水が必要です。水分が不足すると、各臓器の機能に悪影響が出ますので、適切な水分量を確保することは大切です。しかし、飲みたいだけ飲む、適当に飲む、ということは、心不全を患っている方にはお勧めできません。

水分の摂取量が多くなると、心臓に負担がかかり、さまざまな心不全症状を引き起こし、体調を崩す恐れがあります。自分の水分摂取量は、どのくらいが適切なのかを正しく把握し、水分摂取量の変化に伴って、心不全症状が出現していないかをしっかりと意識していくことが重要です。

◎まずは、水分を一日の水分摂取量を確認・調整しましょう。

恐らく、心臓の病気を患っている方は、医師や看護師から水分の適切な摂取量の指示が出ていることでしょう。その水分摂取量を参考にすることが大変重要です。たいてい、食事以外に1000ミリリットルまで、などと言われます。その可能な水分摂取量で一日を過ごすために、一日の飲み方を計画し、過剰になることが生じないように気を付ける必要があります。

食後にお茶やコーヒーを飲む習慣がある、外出の際に飲み物を飲むことが多い、仕事上お茶やお酒を出されて飲むことがある、など、人により飲水のタイミングは様々です。自分のタイミングはいつで、そのタイミングにはどのくらいの量を飲むのかを考え、調整することが大切です。繰り返しになりますが、水分の取り過ぎは、心臓の負担となることがあります。負担にならない水分量を心がけましょう。

◎次に、水分の飲み方を確認・調整しましょう。

水分の取り方は人さまざまです。特に活動量の多い人や暑い環境で仕事をすることが多い人は、水分をガブガブと飲んでしまいがちです。喉の渇きに応えて、一気に水分を飲みたくなりますが、頻度が多くなると水分摂取が過剰になってしまいます。一口量を調整し、喉を潤す方法を身に着ける必要があるかもしれません。

また、温かいものはゆっくりと飲み、冷たいものは早く飲むという傾向があります。温度を考えることで、水分摂取量が変わる可能性もありますので、飲み物の選択も考慮してみるのも一つの方法です。

さらに、飲み物の種類によっては、喉が渇くものがあります。甘いジュース、口に残る味の濃い飲み物は、飲んだ後もさらりとした水分を飲みたくなることがあります。口の中がネバネバして不快になり、やはり水分が欲しくなることもあります。出来る限り、余分な水分摂取につながるものは選択せず、必要な水分補給につながる飲み物を選びたいものです。

このようなことを考慮して、水分摂取量を適切に行えるように工夫します。そして、その適切な水分摂取が維持できているかをセルフモニタリングすることが重要なのです。

これまで、私が出会った、水分摂取が上手な患者様は、

・一日の水分量を水筒に用意し、それを飲むことで飲んだ量を把握している

・冷たい飲み物を飲むときでも、ちびちびと熱いものを飲むときのように飲むことで、一気飲みを回避している

・喉が渇いたときは、水分を飲むが、飲みたくない時はすすめられても残すようにする

人によって、水分を飲むタイミングや飲む量はさまざまですので、ご自分なりの工夫が求められるのが水分摂取です。基本は過剰にならないように、適量を保つことです。

自分の心臓にみあった水分摂取量が分からない方は、医師と看護師に相談し、心臓の負担にならない水分量を理解していきましょう。

合わせて、「水分を取りすぎたらどうしたらいいのか?」も理解してくださいね。

 

水分を取り過ぎたらどうしたらいいのか?

あなたは、自分の生活において、水分摂取量に留意する必要性が、わかってきましたか?

まだ理解できていない人は、「水分の摂取量をセルフモニタリングしていますか?」を参照してくださいね。

さて、水分を注意して飲んでいても、暑い夏、活動量の増加などにより、喉が渇いて水分摂取量が多くなってしまうことがありますよね。そういった場合は、どうすればよいのでしょう??

喉が渇くというのは、身体が水分を必要としているサインですので、水分補給が必要な状況です。心臓の調子が安定している時は、口渇に応じて、水分を摂取することは必要です。しかし、ガブガブと過剰に摂取しては危険ですので、飲み方に注意して、心負荷を生じさせないように考えながら水分を摂取することが大切です。

そして、水分摂取量が多くなってしまった時には、摂取した水分を適切に排せつできているかを確認することが大切です。すなわち、尿量がしっかりと確保できているかを確認するのです。摂取した水分が尿とならずに体内に蓄積し、むくみやだるさ、息切れや咳などを引き起こす状態が心不全の悪化状態です。そういったことが起きていないかをしっかりと観察しましょう。特に尿量が問題なければ、飲んだ分を排せつできているので大きな心配は不要です。

また、飲んだ水分は、しっかりと腎臓に運ばれて尿へと作り替えられる必要があるので、過剰な水分摂取をしてしまったと感じる日の夜は、安静に過ごしてに腎血流量を多くするようにします。身体が休まると筋骨格に血流が取られることが減るので、臓器への血流が増えるのです。その結果、尿量を適正に確保されやすくなります。しっかりと休息をとって排尿が十分にあるかを意識してみましょう。

 

自分の飲水量を確認し、飲んだ水分に応じて排尿できているか、その状況を把握することで、心臓の負担具合を推察することが可能です。

しかし、自己判断に不安がある時や、浮腫みが出てきたなどの体調の変化が見られたときは、心臓が十分に働けていないために起きているのですから、心不全の状態悪化が生じ始めている恐れがあります。そのほかに、息切れやドキドキ感、むくみなど、随伴症状がないかどうかも意識してみることも必要です。このような時は、病院に行くことも考え、これまでの医師の指示を思い出して、積極的に対処しましょう。

水分摂取は、分かっていてもつい飲んでしまうことがあったり、欲求を抑えるのが難しかったりして、コントロールが大変な項目です。しかし、その調節を適正に行う事で、病状悪化防止につながるのです。

心臓を守るのは、あなた自身のセルフモニタリングで可能です。自分の傾向を医師と相談し、留意点を確認していくことも積極的に取り入れていくとよいでしょう。

水分摂取量の確認と調整を生活に取り入れて、その症状変化防止に努めていきましょう。

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