慢性心不全と上手に付き合う方法
心不全は、心臓のポンプとしての働きが低下して、全身の臓器に必要な血液量を送ることができなくなった状態で、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)、心筋症、弁膜症などにより生じたりする心臓の働きが不十分な症候群とされています。
心臓のポンプ機能が低下すると、心臓だけでなく全身の各臓器に十分な栄養や酸素が届けられなくなり、様々な不調や症状が現れることに繋がっていきます。
よって、心不全になっている方は、その状態を安定させながら、長くよいお付き合いをすることで日常生活を円滑にしていくことが非常に重要です。
では、どうやって、心不全とうまく付き合えばよいのでしょうか?
ここでは、その方法について紹介していきます。
Contents
体重の変化を把握し、増加傾向に留意する
心不全の方の「体重増加」は、突然、一気に生じることがあります。
このような、急な「体重増加」は、体の中に水分が蓄積してしまう状態がおこっている可能性があります。
心臓の機能が落ちているため、水分の排泄がうまくいっていない状態ですので、心不全悪化の兆候としてとらえることができます。
よって、体重を定期的に測定し、その変化に留意することは、心不全とうまく付き合う一つの方法となります。
血圧の変化から、体調の異変に気付く
心不全が増悪しているとき、血圧は低下傾向になります。
心臓が十分に機能できていないため、血圧が保てなくなっていまい、下がり気味になっていくのです。
血圧が下がっていると、だるい、頭が重たい、ふらつくなど色々な症状が出てきます。
そのような症状で、心臓がうまく働いていないと気付くこともできますが、血圧がいつもよりも低いというデータは、確実な体調変化の兆候としてとらえやすいので、自宅で定期的に血圧を測定し、その変化を把握しておくことがお勧めです。
脈拍の変化、動悸の出現を自覚する
脈拍が増えるのは、心臓がより多くの栄養分や酸素を全身に届けようと頑張っているときです。
活動により、栄養や酸素の需要が増え、脈拍が増え、胸がドキドキと感じることもありますが、心不全患者様はそれほど活動的ではありませんので、心臓の予備力が低下していると考える方が妥当でしょう。
心臓の働きが弱っているために、体の組織細胞が必要とする栄養や酸素を賄えず、心臓が頑張って脈拍を上昇させることで代償しようとしている状態が、脈拍上昇と動悸感をもたらす原因です。
よって、脈拍が増えていたり、ドキドキと胸の違和感や動悸に注意をはらっておくこと、そして、それらを感じたら、心臓が頑張っている、と認識することが大切です。
水分の摂取量を意識する
心不全患者様は、すでに水分制限を行なっている方も多いかもしれません。
なぜ、水分を取りすぎてはいけないのか、おさらいしてみましょう。
我々の血液は、出血すると流れてくることからわかるように、多くの水分を含んでいます。
そして、その血液量は、体重の13分の1に相当するといわれます。
この水分(血液)を心臓は拍動によって押し出し、全身を循環させているのです。
心臓の調子が悪い場合、その仕事量は心負荷となり、心臓の機能を破たんさせることになります。
よって、水分を過剰に摂取してしまうことは、心臓の仕事量を増やしてしまうので、制限されてしまうことが多いのです。
自分の適切な水分摂取量はどの程度なのか、を踏まえて、それを守りながら水分摂取することが大切です。
息切れの出現に対処する
息切れは、体内の循環動態よりも活動量が多く、酸素の供給が追い付いていないため、もっと多くの酸素を体内に取り入れようとする身体の反応です。
しかし、心不全患者様は、それほど激しい動きをしない方がほとんどです。よって、「安静にしているのに息切れが出る」、とか、「普段と同じことをしているのに今日は息が切れる」というときは、心臓の仕事が間に合っていない可能性があり、注意が必要です。
安静にし、息切れが収まるように心と身体を落ち着けることが大切です。
長く続く息切れは、心臓の負荷となり、心臓の予備力が落ちてしまいますから、病院を早期に受診するようにしましょう。
咳の出現に注意する
咳が心不全の症状だと理解している人は意外と少ないようです。
咳は、風邪を引いた時のように、雑菌を痰に取り込んで排泄しようとする働きにより出現していることもありますが、体の余分な水分が肺にたまり、それを気道から排出しようと咳が起こっていることもあります。
心不全患者様は、心臓のポンプ機能が低下すると、心臓のお隣の臓器である肺に水分を残してしまうことがあるのです。
その肺に残された水分が、痰となり、それを吐き出すための咳であることもしばしばです。
今出ている咳は、何によるものなのか、しっかりと注意することが大切です。
睡眠状態で心臓の負荷を把握する
心臓に負担がかかっているときは、ベッドまたは布団に横になるとつらいと感じることがあります。
そのため、熟睡できなかったり、目が覚めてしまったりして、睡眠が十分にとれないこともあります。
心不全状態が悪化しているときは、心臓の働きが弱り、体内の水分が尿として排泄されず、体内に蓄積してしまいがちです。
足のむくみや肺の水分貯留などは、身体を横にしても改善しません。
よって、眠りにくいと感じる方がおられます。
よって、睡眠が思うように取れなくなったときは、その原因を探り、心臓からくるものではないのか、確認することが必要となります。
体のだるさが酷くなっていないか感じ取る
身体のだるさ、難しい言葉で「倦怠感」とも言われます。
心不全の方は、常にこの倦怠感を感じていることが多いようです。心臓の機能が弱っている状態が続いているため、日常生活の動きでも、心臓の仕事量が増えて、しんどいと感じてしまうのです。
よって、心不全の患者様に体のだるさが常にあるのは、どうしても避けられないことになります。
しかし、倦怠感が増すというのは、気を付けなければいけません。
さらに心臓の力が弱くなっており、全身への酸素や栄養分の供給がしにくくなっている状態になっているかもしれません。
「いつもの動きがしんどくてできない」、「なんだか億劫と感じて、いつものことをしない」というときは、倦怠感が増強状態かもしれません。自分の体調を意識して確認しましょう。
むくみの出現と悪化を観察する
むくみ(浮腫)は、体に余分な水分がたまっている状態です。
特に、下肢に出やすいため、下肢の観察を行なうことが多くあります。
むくみのない方は、むくみが現れていないか、軽度のむくみが常にある方は、それが悪化していないか、観察します。
足の甲やすねを指でゆっくり押して、その皮膚の戻り具合を見てみます。指の跡が残り皮膚がへこんだ状態になっていたら、むくみありです。
むくみは、心臓の機能低下に伴う水分の体内蓄積です。
その変化を意識しながら、心臓の機能状態を見極めることが可能です。
ぜひ、むくみの観察方法をマスターして、自分の心臓の状態を把握していきましょう。
尿量の減少にいち早く気付くようにする
心不全が悪化すると体内に水分が蓄積し安くなるため、尿量が減少します。
メカニズムとしては、心臓のポンプ機能が低下し、血圧が下がり気味になるため、腎臓の尿を生成する力が弱まり、尿量が減り、排泄されない水分が体内に留まり、むくみなどに繋がっていくというものです。
よって、尿量がいつもより少ない、尿回数がすくない、といった自覚は非常に大切です。
尿量が減る理由は、今日の生活スタイルのせいなのか、それとも、心不全の増悪によるものなのか、自分なりに考えてみることが受診行動に繋がりますので、しっかりと意識していきましょう。
塩分の取りすぎを避けよう
塩分の取りすぎは、当然身体に悪く、心臓にも負担をかけることになります。
塩分を多く摂取した後、その塩分を中和・排泄しようと、血管内に水分が取り込まれ、血液中の水分量が増加します。
血液量が増えたら、心臓のポンプ作用のお仕事が増えてしまいます。
心臓は頑張って血液を循環させますが、その量が多いためその機能が破たんしてしまうことに繋がってしまいかねません。
不必要に塩分を摂取することで心臓を苦しめることになることを知り、適切な食事・間食をこころがけたいものです。
活動量(動き)の変化を察知しよう
心臓の機能が落ちているときは、動きたくても動けません。
「いつもできるのにできない」「体がついてこない」などの自覚は、活動量が低下している症状です。
心臓の機能が低下し、生じている活動量の低下が考えられます。
自分は、いつも通り動けているのか、自分の動きの変化を意識し、何がどう変化しているか、察知していくことが重要です。
心不全患者様の中には、この知識がなく、「好きなように動いている」という方がおられますが、好きなように動くことも、心臓に無理をさせていることもあります。
自分の心臓が許容する活動量はどの程度なのか、自分はどのような動きは可能なのか(もしくは無理なのか)、意識して、その変化を察知していきましょう。
処方されている内服をきっちり飲む
病気を悪くしないために、お薬をしっかり飲んでおくことはとても重要です。
お薬は、継続的に飲むことで、その血中濃度が有効に保たれ、病状や症状の緩和に繋がっています。
よって、処方されたお薬は、間違いなく内服することを欠かさず続けましょう。
体調がすぐれないとき、心臓に負荷がかかっているとき、お薬を飲み忘れていることはないか確認し、かかりつけ病院と相談し、適切に対処していきましょう。
診察を欠かさず受ける
心不全は、自覚がないままに進行していることもあります。
心臓の予備力は、病院の検査でわかりますので、定期的な受診を、医師の指示通りに欠かさず行ないましょう。
受診をすると、あなたの現在の心機能に応じて、生活で留意するべきことなどを把握することも可能です。
あなたの生活で、気になることを医師や看護師に話し、安心した生活を送ることができるようにしていきましょう。
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