体調の変化を確認する
体重のセルフモニタリング
ここでは、心不全が悪化していくときに生じやすい症状で、自ら気づきやすい症状の一つである体重の変化について解説するとともに、自らが体重の変化を自覚して、セルフモニタリングする方法についてお伝えします。
体重のセルフモニタリングをしていますか?
あなたは、普段、自分の体重測定を行っていますか?
もしかしたら、かかりつけ医師に「体重を測って、3キロ増えたら病院に来てね」、などと指導されて、測っているかもしれませんね。
では、体重を定期的に測定しているとして、あなたは、なぜ、体重測定が必要だと理解していますか?
「太ったら心臓に負担が掛かるから」「体重が増えると病気が悪くなるから」とお答えになる方がおおいのです感じることはしばしばあることですが、それが心臓の調子を反映していることはご存知でしょうか。
心臓の悪い方は、この体重の変化を意識することがとても重要です。
心機能と体重は、とても密接な関係にあり、それを理解することこそ、セルフモニタリングが的確にできるようになる大切なポイントですので、ぜひ理解を深めてください。
心臓は全身の細胞や臓器に酸素や栄養を含んだ血液を送り届け、同時に体内の老廃物も静脈系を動かして集め、排せつへとつなげています。
しかし、栄養や水分を取り込む量と老廃物などの不要物を体外に排せつする量のバランスが悪くなったとき、体重が増える結果となります。特に、不要物を体外に排せつする力が弱くなると体重が増えてしまいます。心臓の調子が悪いと、多く取り入れられた水分などを腎臓へ届けて排せつさせるための力が弱くなってしまい、結果的に体重が増えるということが起こってしまうのです。
心臓のポンプ力が弱いと、血圧が低めとなり、どうしても細胞内に水分が滞りがちになり、尿量の減少と同時に浮腫みも生じやすくなります。そうするとますます体重は増えた状態になり、「あれ、太っちゃった」などと感じるのです。
しかし、それは「太った」のではなく、心機能が低下している状態なのです。
つまり、体重が増えた、という自覚は、心不全の方の場合、体外に不要な水分を排せつする心機能の低下という現象が生じていることを暗示している可能性がある、という事なのです。
さて、今、あなたは、『体重増加は、心機能が低下しているサイン』と理解することができましたでしょうか?
したがって、あなたは、日ごろから定期的に体重測定を行なって、自分の体重変化をを意識することが大切なのです。
合わせて、「体重の変化で、モニタリングすべきポイント」も理解してくださいね。
体重の変化でセルフモニタリングすべきポイント
『体重の変化は、心機能が低下しているサイン』であることは理解できましたか?
まだ理解できていない人は、「体重のセルフモニタリングをしていますか?」を参照してくださいね。
あなたの体は、もしかしたらやや太り気味かもしれません。しかし、その状態で心臓の機能が安定しているとしたら、まずはその体重を維持することが重要です。決して、体重を増やしてはいけません、心臓に負担がかかりやすくなってしまいます。仮に、肥満があり、医師からもダイエットを推奨されているような場合は、徐々にリバウンドしないように減量をすることが必要です。決して体重を増やしてはいけません。これは、肥満のある方の体重管理の重要な考え方です。
ここで留意して頂きたいのは、肥満に伴って体重を管理する必要がある方と、心不全があって体重を管理する必要がある方がいるということです。先ほどの説明は、肥満に伴う体重管理の話です。ここからは、心不全の方に必要な体重管理の話です。この2つ(肥満&心不全)の両方の管理が必要な方は、考え方を分ける必要がありますので、留意してください。
心不全を患っている心臓は、疲労や寝不足などのちょっとした負荷や労作により負担がかかりやすく、心臓の動きが不安定になりがちです。そういう状態になっている、もしくはなりかかってくると、尿量の減少や浮腫みなどが生じやすくなり、体内に水分が蓄積しやすくなるのです。これが、体重増加の原因となります。決して、肥満で太ったのではありません。排せつされるべき水分が、心臓の力の弱まりによって体に残り、体重が増えている状態です。よって、体重測定で監視し、体重が増えていないかを留意するとともに、徐々に増えてくる体重は、心不全悪化の兆しと理解しておくことも重要です。
これまで、私が出会った患者様は、
・体重が増えているけど、昨日少し食べ過ぎてしまったからな。
・ちょっと体重が増えたときは、ダイエットしないとと考える。
といった、心不全による体重増加と肥満の増加とを混同している方が多くおられました。
心不全の方にとっての体重測定は、心臓が適切な活動を維持できているかを教えてくれるモニタリングなのです。
つまり、体重の変化でセルフモニタリングすべきポイントは、体重の増加が生じていないかを把握して、心臓の機能が低下していないかを把握すること、なのです。
合わせて、「体重の変化を自覚したらどうしたらいいのか?」も理解してくださいね。
体重の変化を自覚したらどうしたらいいのか?
あなたは、自分の生活において、体重の変化に留意する必要性が、わかってきましたか?
まだ理解できていない人は、「体重のセルフモニタリングをしていますか?」を参照してくださいね。
さて、体重の変化が感じられたらどうすればよいのでしょう??
体重が増えている!とわかったら、同時に尿量の変化や浮腫みが生じていないかを確認してみましょう。
①体重が少し増えたが、尿は出ており、むくみはない(いつも通り動ける)
②体重が増えた上、尿の出方がいつもと違っており、倦怠感(だるさ)やむくみもいつもより多いようだ
③体重が増えた上、尿の出方がいつもと違っており、いつも出来ていることができない(しんどくてあまり動きたくない)
どのような状態かをしっかりとらえましょう。
あなたの変化は、上記のどれかに当てはまることになると思いますが、その状態をどのように解釈しますか?
症状や状態に対する解釈が適切になされることで、病状悪化が食い止められるのです。
①の状態の場合は、要注意ですが、安静にすることで収まるようであれば、少し様子を見ることは可能な状態と言えるでしょう。前にも感じたことがあるなら、前におこなった対処行動をとってみるのも良い方法です。
しかし、②、③は、安静にして倦怠感などの症状が落ち着いたとしても、心臓の調子が悪化傾向にある可能性が否定できません。だるさやむくみの増強は、心臓が十分に働けていないために起きているのですから、心不全の状態悪化が生じ始めている恐れがあります。そのほかに、息切れやドキドキ感、むくみなど、随伴症状がないかどうかも意識してみることも必要です。このような時は、病院に行くことも考え、これまでの医師の指示を思い出して、積極的に対処しましょう。
体重の変化を把握するように病院で指導されている心臓病の患者様は、かなりおられます。しかし、その意味が正しく理解されている割合は意外と低いと思われます。多くの方は、肥満と結びつけて体重管理の必要性を理解してしまっています。肥満予防ももちろん大変重要です。しかし、心不全の方は、病状悪化の兆候として体重増加が現れることがあるのです。
せっかく、体重を測定するのであれば、病状悪化を見逃しすことなく、体重を観察したいものです。
体重の増加と心不全の関係を正しく理解して、その症状変化に適切な判断を下していきましょう。