増悪させない生活行動
睡眠・休息のセルフモニタリング
ここでは、心不全を悪化させてしまいやすい生活行動で、自ら気づきやすい行動の一つである睡眠・休息について解説するとともに、自らの睡眠・休息を自覚して、セルフモニタリングする方法についてお伝えします。
睡眠・休息をセルフモニタリングしていますか?
あなたは、自分の睡眠や休息の充足状況を気にかけていますか?
寝不足があると、当然「眠たいなぁ」「疲れが残ってる」などと、感じることはしばしばあることですが、それが心臓の不調を反映している場合があることはご存知でしょうか。
心臓の悪い方は、ご自分の睡眠や休息の充足状況を意識することがとても重要です。
心機能が低下していると、血圧が低めとなり、身体がだるく感じたり、横になりたいと欲したりして、動きが緩慢になりがちです。これは、身体活動に対して心臓の酸素や栄養の供給が間に合わないことが関連しています。心臓の調子が悪いときには、動きたくてもしんどさが先に立ち動けず、とにかく眠りたい、休みたいと感じやすくなるのです。
当然、一日の終わりや活動の後は疲労感があり、眠くなるものです。しかし、朝起きたとき、いつもなら起き上がっているはずなのに起き上がれない、起きたくないといった状態になったり、いつもと違って何もしたくないとか、手につかなく休息していたいと感じたりして、ゴロゴロしてしまったりする場合、心臓が無理できない状態に陥っている、すなわち心不全が悪化していることがあるのです。
心臓は全身の細胞や臓器に酸素や栄養を含んだ血液を送り届けていますが、身体を動かしたり、寝ている状態から起き上がったりすることは、その酸素や栄養の需要が増すため、心臓にとっては仕事が増える負担なことなのです。通常であれば、負担であっても心臓は血圧を上げたり心拍数を増やして、仕事をこなすことができます。しかし、心不全が悪化傾向にあるときは、その予備力を発揮できず、無理がきかない状態になり、動くことができないとか、動きたくないといった感覚になるのです。
心不全を患っていると、血圧が低くなりがちです。心臓の力が弱くなっているため、心臓から血液を全身に送るパワーが少なくなっているのです。そして、心臓の調子が悪くなっている(心不全の増悪)ときは、さらに血圧が低くなることがあり、身体はいうことを聞いてくれません。よって、睡眠や休息の充足感は心不全の増悪を示すサインといえるのです。
さて、今、あなたは、『睡眠や休息の充足感が、心臓の調子を現すサイン』と理解することができましたでしょうか?
したがって、あなたは、日ごろ、睡眠と起床がいつも通り出ているか、休み足りない感じがしてゴロゴロしてしまったりしていないか、を意識することが大切なのです。
合わせて、「睡眠・休息で、モニタリングすべきポイント」も理解してくださいね。
睡眠・休息でセルフモニタリングすべきポイント
『睡眠や休息の充足感が、心臓の調子を現すサイン』であることは理解できましたか?
まだ理解できていない人は、「睡眠・休息をセルフモニタリングしていますか?」を参照してくださいね。
あなたの体は、夜間にしっかりと睡眠がとれてこそ、イキイキと活動できています。しかし、よく休んでも、良く寝たつもりでも、起き上がるのがしんどい時、活動するのがおっくうだったり出来なくなっていたりする時は要注意です。
もし、しんどさが強く動きたくないと感じているのに、強い意志で無理矢理動いた場合、心臓はどうなると思いますか?
ーもし、心不全の状態が悪化傾向のために身体がだるく、動きたくないと感じているなら、無理な活動で心臓に負荷をかけてしまい、心臓が上手く機能しなくなってしまう可能性があります。
従って、起き上がる時や活動前の自分の身体の感覚は非常に大切なモニタリング項目となるのです。
身体がしんどくて動きたくないと感じていても、体を使わないわけにいかない仕事や家事があれば、人はそれをこなそうとします。負荷がかかった心臓は、破たんするまで頑張りますが、その前に様々な心不全症状を引き起こします。具体的には、倦怠感はもちろんのこと、息切れ、浮腫み、尿量の減少、動悸などの身体症状、また、食欲不振、不眠といった生活への影響も出てきます。しんどい中、頑張って活動する時には、こういった症状が出現してきていないか、心臓に無理が掛かっていないかを意識してモニタリングすることが重要です。
以前に出会った心不全患者様で、心不全がひどくなった日の夜、横になっても眠れないと訴える方がおられました。日中の仕事で疲れていたので、早く寝ようと床についたけれど、横になっていることすらしんどくなったというのです。そして、まるで風邪をひいたかのように咳や痰が出て、息苦しさで座っていた方が楽な状態になり、横たわって眠ることが出来なくなったそうです。これは、心臓の調子がどんどんと悪くなり、心臓がパンク寸前になっている肺水腫という症状です。手足が浮腫んでくるのみならず、肺にも水分が貯留し咳や痰が出てきたり、息苦しくなったりしてしまうのです。
しんどい中、頑張って動いたあとは、体調を悪化させてしまっており、休みたくても横になれない、眠れない、息苦しいという状態に陥ることもあるので、動いたあともしっかりと休息や睡眠がとれているかも観察していきましょう。
ポイントは、よく眠り(休み)、普段通りに活動し、またよく眠れているか、という安定した日常生活を送れているか、ですね。
合わせて、「睡眠・休息の不足を自覚したらどうしたらいいのか?」も理解してくださいね。
睡眠・休息の不足を自覚したらどうしたらいいのか?
あなたは、自分の生活において、睡眠・休息が足りているかを留意する必要性が、わかってきましたか?
まだ理解できていない人は、「睡眠・休息をセルフモニタリングしていますか?」を参照してくださいね。
さて、睡眠や休息の不足を感じたらどうすればよいのでしょう??
先ずは、睡眠・休息がどのように変化しているのか、よく意識してみましょう。
①良く眠れているが、何となく起きたくない。起きたら動くことはできるし体調悪化は感じない(いつも通り動ける)
②良く眠れているが、何となく起きたくない。起きたら動けるが、しんどい・息切れ・浮腫むなど心不全症状を感じる
③眠ろうとしても眠れない。横になっても、しんどさ・息切れ・咳などの苦しい症状を感じる
どのような状態かをしっかりとらえましょう。
あなたの睡眠・休息の変化は、上記のどれかに当てはまることになると思いますが、その状態をどのように解釈しますか?
症状や状態に対する解釈が適切になされることで、病状悪化が食い止められるのです。
①の状態の場合は、要注意ですが、動いたあとも体調悪化が無く、その夜には再びよく眠ることができるようであれば、様子を見ることは可能な状態と言えるでしょう。前にも感じたことがあるなら、前におこなった対処行動をとってみるのも良い方法です。
しかし、②、③は、安静にして落ち着いたとしても、心臓の調子が悪化傾向にある可能性が否定できません。しんどさやむくみの増強は、心臓が十分に働けていないために起きているのですから、心不全の状態悪化が生じ始めている恐れがあります。そのほかに、いつもと異なる体調変化が生じていないかどうかも意識してみることも必要です。このような時は、病院に行くことも考え、これまでの医師の指示を思い出して、積極的に対処しましょう。
質の良い睡眠は疲労を回復する上で大変重要な上、心臓の負荷を取り除くために心不全を患っている方には不可欠です。それが眠っても眠っても充足感が無かったり、寝苦しい状態になっていたりする時は、心臓の不調が起きている場合もあるということを理解しておきましょう。疲れがたまっているとか、年のせいで寝つきが悪くなったとか、ついつい軽いほうに考えてしまいがちになります。
でも、その小さな見逃しが、あなたの心臓の負担となり、心臓への負担を悪化させているかもしれません。
心臓を守るのは、あなた自身のセルフモニタリングで可能です。自分の傾向を医師と相談し、留意点を確認していくことも積極的に取り入れていくとよいでしょう。
睡眠・休息の質の確認をあなたの生活に取り入れて、その症状変化に適切な判断を下していきましょう。