血圧のセルフモニタリング

 

ここでは、心不全が悪化していくときに生じやすい症状で、自ら気づきやすい症状の一つである血圧の変化について解説するとともに、自らが血圧の変化を自覚して、セルフモニタリングする方法についてお伝えします。

血圧をセルフモニタリングしていますか?

あなたは、普段、自分の血圧を測定したりを気にかけていますか?

血圧は心臓が血液を送り出す圧力ですから、心臓の力強さや心臓の調子を反映していることはご存知の通りです。

心臓の悪い方は、この血圧の変化を把握して、心臓の調子に変化が生じていないかを意識することがとても重要です。

自分の血圧を把握することは、心不全のセルフモニタリングが的確にできるようになる大切なポイントですので、ぜひ理解を深めてください。

心臓は全身の細胞や臓器に酸素や栄養を含んだ血液を送り届けていますが、これは十分な血圧が無ければ成し遂げられません。同時に体内の老廃物も静脈系を動かして集め、排せつへとつなげていますが、同様に十分な血圧が必要となります。

心臓に負担が掛かっていたり、心臓の調子が悪くなると、血圧が低くなることがあります。そういう時、心臓から送り出される血液が不十分となるので、さまざまな症状が起こります。

・動くとしんどい、息切れがする、身体がだるい(倦怠感)

・おしっこの量が少ない、身体が浮腫む、身体が重たい

これら上記の症状は、心臓のポンプ力が弱まり、血圧が低くなっている時に感じやすい自覚症状です。

全身をめぐる血液を後押しする血圧ですので、全身のあらゆるところに症状を引き起こしてしまいます。

心不全が悪化傾向にあっても、普段の動きの範囲内において血圧が適切に維持されていれば、当然上記症状は軽く、感じられないこともあります。しかし、少し大きく動いたとき(散歩や庭仕事、運動といったやや労作のかかる活動をした時)に上記の症状が生じる方もいます。これは、普段よりも負荷のかかる動きに、心臓が付いてこれていない可能性を示唆するものです。

心臓は、通常、身体の動きに伴って変動し、活動量が増えれば、酸素や栄養素を多く必要とするので、血圧を上昇させて対応します。しかし、このような対応が出来なくなり、大きく動いたときや普段よりも負荷のかかる動きをした時に、上記の症状が生じる方もおられます。これも、心不全の悪化のサインである可能性があります。

いつも出来ている労作や大きな動きに、負担感がある場合も血圧が十分に出せなくなっている心不全の可能性があることを知っておくことが大切です。

したがって、あなたは、日ごろ、血圧がどのような値なのか、今日も普段と変わりないのか、動いたときも血圧は適切に保てているのか、を意識するセルフモニタリングが必要なのです。

合わせて、「血圧で、モニタリングすべきポイント」も理解してくださいね。

 

血圧でセルフモニタリングすべきポイント

『血圧の変化は、心機能が低下しているサイン』であることは理解できましたか?

まだ理解できていない人は、「血圧をセルフモニタリングしていますか?」を参照してくださいね。

あなたの体は、血圧がしっかりと保たれ、全身に血液が十分にめぐっていることで、イキイキと活動できています。しかし、心臓が弱っていて、血圧が出なくなっていたら、体はどうなってしまうと思いますか?

ーそうです、身体の動きに対応できず、息切れや身体のだるさ(倦怠感)しんどさなどを感じ、身体を動かせなくなってしまいます。

血圧が低くなっていると、身体にどんな影響が出て来ると思いますか?

-そうです、身体の不要物を体外に排せつする力も弱くなってしまうため、尿量の減少やむくみが生じたり、ひどくなると、肺に水分が貯まって(肺水腫)咳が出たり、呼吸を困難にしてしまう事もあります。
それなのに、体を使わないわけにいかない仕事や家事があれば、人はそれをこなそうとしますが、無理をして体を動かすと、ますます心機能に余裕がなくなり、腎臓へ血流を回すことが出来なくなり、尿量がさらに減ったり、むくみがひどくなったりしていきます。

だから、血圧の変化の自覚をセルフモニタリングして、身体に負担をかけないよう気を付けることが重要なのです。

あなたの生活で、血圧の変化が生じやすいタイミングで、尿の量や出方の変化を意識してみましょう。

これまで、私が出会った患者様は、

・朝起きたとき:いつも同じ時間帯に同じ姿勢で測った時に、血圧が低かった

・通勤、通院など移動したとき:いつも通りに動いているのに、いつもの坂(階段)を登れなかったり、身体がだるく、血圧が低いと感じた

・家事をしたとき:いつもの仕事がこなせず、身体がだるくて、むくんだ感じがして、血圧が低く感じた

などなど、生活の随所で血圧の変化を自覚する経験をされているようです。

血圧を測る習慣があると、血圧変動と同時にその時々の自分の体調や症状を結び付けて感じ取ることが出来るようになっていきます。ただ数値を測るだけでなく、数値の変動と共に自分の身体に起きていることや症状を把握していくことで、血圧の変動の理解が深まっていきます。心不全、心臓病をお持ちの方は、心臓に由来して血圧が変化すると様々な体調不良の症状を引き起こす、ということを知っておくことが大切です。その変化の様相によっては、病状の悪化を察知することも可能です。

つまり血圧の変動でセルフモニタリングすべきポイントは、自己の生活における血圧測定を行い、同時に随伴症状をできる限り把握すること、です。

合わせて、「血圧の変化を自覚したらどうしたらいいのか?」も理解してくださいね。

 

血圧の変化を自覚したらどうしたらいいのか?

あなたは、自分の生活において、血圧の変化に留意する必要性が、わかってきましたか?

まだ理解できていない人は、「血圧をセルフモニタリングしていますか?」を参照してくださいね。

さて、血圧がいつもと違うな、と感じられたらどうすればよいのでしょう??

先ずは、血圧がどのように変化しているのか、よく意識してみましょう。

①血圧の値がいつもより低いが、いつも通りの体調で、身体も動かせているし、動いてもいつもと異なる症状は特に出現していない

②血圧の値がいつもより低いが、いつも通りの体調で、身体も動かせている。しかし、動きに伴ってしんどさや息切れなど症状を感じる

③血圧の値がいつもより低く、いつも通りの動きが出来ていない。横になりたい、休みたい。今日はできないなど

どのような状態かをしっかりとらえましょう。

あなたの血圧の変化は、上記のどれかに当てはまることになると思いますが、その状態をどのように解釈しますか?

症状や状態に対する解釈が適切になされることで、病状悪化が食い止められるのです。

①の状態の場合は、要注意ですが、血圧変動に伴う心負荷症状は現れていないので、少し様子を見ることは可能な状態と言えるでしょう。前にも感じたことがあるなら、前におこなった対処行動をとってみるのも良い方法です。

しかし、②、③は、心臓の調子が悪化傾向にある可能性が否定できません。症状の出現とその増強は、心臓が十分に働けていないために起きているのですから、心不全の状態悪化が生じ始めている恐れがあります。そのほかに、息切れやドキドキ感、むくみなど、随伴症状がないかどうかも意識してみることも必要です。このような時は、病院に行くことも考え、これまでの医師の指示を思い出して、積極的に対処しましょう。

血圧を測って記録をていねいに付けていても、随伴症状との関連を意識したり、血圧の変動を正しく解釈している心臓病の患者様は、意外と少ないのです。でも、その小さな見逃しが、あなたの心臓の負担となり、心臓への負担を悪化させているかもしれません。

心臓を守るのは、あなた自身のセルフモニタリングで可能です。自分の傾向を医師と相談し、留意点を確認していくことも積極的に取り入れていくとよいでしょう。

血圧の測定とその変化の自覚をあなたの生活に取り入れて、その症状変化に適切な判断を下していきましょう。

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